生成AIによる要件定義研修
AIを教える研修を、AIで作った。
概要
- クライアント
- 企業向け生成AI研修(研修事業会社を通じた受託)
- 役割
- テクニカルPM · 教材設計 · データ分析
- 期間
- 2026年6月〜9月(設計・制作・実施)
- 規模
- 受講者 約70名/3日間・オンサイト
- 使用技術
- Python (pandas) · python-pptx / lxml · LibreOffice CLI · Claude Code · GitHub Copilot / Codespaces
課題
同時に満たさなければならない制約が3つあった。
実務経験ゼロを前提に組むこと。それでも3日間で「上流工程の思考」を体験させる必要がある。座学では身につかない領域なので、演習として回すしかない。
AIへの過信を壊すこと。生成AI研修で繰り返し起きる失敗は、出力を無批判に信じてしまうことだ。「気をつけましょう」と言っても直らない。自分が引っかかる体験として仕込むしかない。
できない層を置き去りにしないこと。約70名もいればスキル差は必ずある。上位層だけが楽しんで、他が黙って座っている研修は失敗だ。全員に何かしら「できた」を残す必要があった。
① 事前アンケートの定量分析 → グループ編成設計
5指標の回答を能力点へ反転させ、重み付き合成スコアにまとめ、3つのティアに切ってグループ編成に使った。
ただし効いたのは分類そのものより、その周りに置いた頑健性の監査のほうだ。クライアントに区分を出す以上、「なぜこの線引きなのか」に即答できなければ意思決定には使えない。だから、重み感度分析(重みを均等に変えても94%が同じティアに残ることを確認)、境界±0.5点のバンドを黙って振り分けず「どちらとも言える」と明示ラベル化、速答や全項目同一回答といった回答品質フラグの検出、の3つを揃えた。
分析には「データが支持すること」と「支持しないこと」を分離した文書を添えている。全処理はスクリプト化してあり、同じ入力からは必ず同じ出力が出る。再現できない分析は、検証もできない。
② カリキュラム設計 —「教えない」演習設計
3日間を「現状把握 → 課題発見 → 要件化」に対応させ、前日の成果物が翌日の入力になる一本のラインとして設計した。独立した3つのワークショップを並べたのではない。
AI出力の評価演習では、評価の型を教える前にまず判定させる。種明かしは後だ。誤りは難易度を3段階に分けて仕込んであるので、どのレベルの受講者にも「自分は見つけられた」が最低ひとつ残る。
ヒアリングのロールプレイは問題カード式で、4人1組・75分・4ラウンド。カードは、開いた質問に対しては有用な情報を返さないよう設計してある。仮説を持った閉じた質問でしか前に進めない構造にすることで、「仮説を持って聞く」を助言ではなく構造上の制約に変えた。
講師の例示は汎用題材、受講者の演習は自テーマ、と題材を分離している。デモをそのまま答案に写せないようにするためだ。
③ 教材制作パイプライン
ブランドテンプレート準拠のスライドをゼロから再現すると、必ずどこかがズレる。ロゴ、余白、塗り。だからテンプレートは再現しない。PPTXをunpackし、lxmlでXMLを直接編集して、またpackし直す。テンプレート自身の装飾はそのまま継承される。
出力の検証は、LibreOffice CLI でPDFに変換し pdftoppm で画像化して行う。文字あふれやレイアウト崩れを、誰かの目に触れる前に潰せる。
日本語フォントが中国語グリフに静かにフォールバックする問題は、回避策でごまかさず rPr レベルで明示制御して抑えた。
3日間の設計
規模感の指標
- 受講者
- 約70名
- 研修日数
- 3日間・オンサイト
- 事前アンケート回答率
- 100%
- ティア分類の重み感度一致率
- 94%
- 演習教材
- 14点
- 同時進行グループ数
- 17〜18
学び
クライアントに出す分析は「正しい」だけでは足りない。「なぜそう言えるのか」に淀みなく答えられて、はじめて意思決定に使える。感度分析も境界バンドも、精度を上げる作業ではなく説明責任を果たす作業だった。
AI活用研修の設計そのものにAIを使うと、「AIに任せてよい所」と「人がやる所」の境界を、説明としてではなく実感として持てる。これは教室での説得力に直結した。
テンプレートは再現しようとせず、XMLごと継承する。速くて確実で、この発想はスライドに限らず応用が効く。
本ケーススタディは、守秘義務に配慮しクライアント名・固有情報を伏せ、設計手法とプロセスに限定して記載しています。数値は概数です。